斜陽産業、ラジオ業界。そんなラジオ業界に一石を投じる(?)マンガ、それが「波よ聞いてくれ」。

「無限の住人」「おひっこし」「ハルシオン・ランチ」「幻想ギネコクラシー」などの沙村広明最新作。

 エログロなど、尖った要素が多い作風の彼だけど「波よ聞いてくれ」は万人にオススメできる。(…少なくとも今の所は)

「波よ聞いてくれ」がおもしろいから、聞いてください。

ネタバレなし。そもそもネタばらしするようなことが今のところ、ほぼないので、杞憂かもしれません。

追記(2018/8/2)

4巻後半、5巻から怒涛の展開へとまいりました。これは読んでくれと言わんばかりの展開。一気に物語性が増します。
今記事には、そのネタバレは含みませんのでご安心ください。

画像の引用について
マンガ内の画像をいくつか記事内にて引用させてもらっています。
内容をわかりやすくするために使わせて頂いており、著作権は作者に帰属します。

あらすじ

鼓田(こだ)ミナレ、20代独身。札幌在住、スープカレー屋勤務。
ひょんなことからギョーカイ人の中年男性にダマされ、ワケも分からずラジオDJデビュー。カレー界とラジオ界の覇道を歩むべく奮闘はしないが、真の愛と幸せと享楽を求めてオンナは戦い続ける、に違いない。
さあさあさあ、波よ聞いてくれ!!!

引用:アフタヌーン公式サイト「波よ聞いてくれ」より

 沙村氏本人のコメント。若干滑ってる気がするけど、波よ聞いてくれを読んだ後だとわりと面白く思えるこの紹介文。

本人コメントの後に僭越ながら、もう少し具体的かつ端的に説明させてもらうと、

ざっくり
 カレー屋店員:鼓田ミナレ(主人公)が、彼氏に金を持ち逃げされた話を、初対面のひとに居酒屋で愚痴っていたら、それが録音されていた。

 録音してた人がラジオ局のディレクターで、企画でその話がそのままラジオで流され、放送をリアルタイムで妨害しにいって、そこからラジオDJの道が開かれてしまう。

 酔っ払いのむちゃくちゃ与太話が電波にのってしまったわけです。

 たいていの酔っぱらいって酔ってるときの発言覚えてないじゃないですか。しかも好き放題しゃべるじゃないですか。それこそあることないこと。それが電波にのるわけですよ。そりゃ血眼になってカレー屋の作業ほっぽいて、ラジオ局にいっちゃいますよ。

 8割の人はそんなことされたら様子見るか、やっちまったーなぁとビビって縮こまるところ。それが鼓田ミナレの場合、直談判からの、リアルタイム出演。このフットワークの軽さ。このテンポの良さが癖になるわけです。

公式で1話がまるまる読めます
アフタヌーン「波よ聞いてくれ」
 

独特のテンポと日常的で非日常

 超能力も出なければ、人もバカスカ亡くなるマンガではない。

 根本は日常系なんですが、鼓田ミナレをはじめとして、セリフが濃い。

 線の濃さがあるキャラより、セリフが濃い。内容がない様で、切れ味バツグンの鋭い発言を流れるように打ち込んでくる。

小ネタがいちいち秀逸

『波よ聞いてくれ』©沙村広明

 どのキャラも一定のボケがあって、それがめちゃくちゃ細かい。ツッコミがないと成り立たないようなボケをする。

 ただ今の10代や若い層には、やや受けが悪い気がする。

 ノリや背景が若干大人寄り(ボケやツッコミで出てくる著名人の名前的に)なので、ある程度の年数生きてないと、わかりにくい。

 わかりにくい原因は語彙であったり、カルチャーの背景知識であったり。(自分も全てのボケがわかるわけではないので、偉そうなことは言うつもりは毛頭ないです。)

 でも、わかれば本当に面白いと思えること請け合い。

 マンガを読んで知識が増えることなんてしょっちゅう。読んだその時にしらなくてもいいんですよ。時間をあけて、繰り返して読めば、「あーこれそういうことか」と思えます。ただ時間をあけるだけじゃ、そうならないですけどね。

 驚くほど物知りな10歳もいれば、がっかりするほど何も知らない40歳もいる。

 受けにくい要素はあるけど、一度うけたら抜け出せない沼感。知ることに歳はあまり関係ないです。

常に安定したテンポとネタ数

 10代にうけにくいだのどうの言いましたが、どのシーンも安定して面白い。

  どのページにも小さいボケがあって、枠外の文字ひとつひとつが面白い。1ページ1ページの密度が濃い。

 「猟銃・買い方」でググる25歳女性とか最高じゃないですか?

 B級のノリが常に続いて安定して面白いんですが、ときたま抜群に面白い。

 ミナレの名前の話なんて、読んだあとに「うおーおもしれえー!!」と家で叫んでしまった。

 いつもは「安定しておもしれえなー」とふふっと笑う程度なのですが、あのくだりは叫ぶくらい面白かった。いきあたりばったりなストーリーかと思いきや、あれは反則ですよ沙村広明。B急からS級。ぷりぷりプリズナーですよ。

主人公:鼓田ミナレの魅力

この漫画はなんといっても、鼓田ミナレの慢談を楽しむ作品。そして頭のキレ。
 「コミックスの表紙が毎回が鼓田ミナレ」ってくらい作者も推してる。魅力的なキャラは他にもいるけど、「波よ聞いてくれ」に関しては、鼓田ミナレがピカイチ。

まず美人。そして男勝りな性格。

『波よ聞いてくれ』©沙村広明

 容姿がまず美人。男従業員が惚れてたり、ディレクターの麻藤さんも「黙ってたほうがモテると思う」と言う。ラジオ局で喋らせてるのは麻藤さんの仕業でしかないのに。

並々ならない活力

『波よ聞いてくれ』©沙村広明

 そして常人から逸脱した活力。その場しのぎで適当にモノを言ってやりすごす姿は、もはや一休さん。発言にとんちがきいてる。セミなみに刹那を生きてる。

 ミナレはお金がなくなってアパートを追い出されるんですが、それでもヘコタレない。「生きてりゃなんとかなるんだな」って思わせてくれるから、ミナレの生き様はよい。生きてるだけで儲けもん。

感情的なのにロジカルなセリフまわし

 ミナレはつねにふざけたことばっかり言ってるんですが、それらどれもこれもロジカル。

 ボケもひねったものが目立つ。

 そしてツッコミ。彼女のツッコミは、勢いがあるのにめちゃくちゃ論理的。

 しかもそれに嫌味がない。

 ちょっと頭を回転させた理屈っぽいツッコミをするんだけど、さっぱりしてる。ロジカルなツッコミを感情的に勢いよく乗せる。(ボケがそもそも理屈っぽいからかもしれませんけど)

 その嫌味のなさが、本当に気持ちよくて、いつまでもミナレの管巻きを聞いていたいと思える。嫌味なく理屈っぽいのは、地味にすごいことで、技量が要ります。ミナレのラジオがあったら間違いなく聴いてる。

 芸人で言うと、トータルテンボスが近いような気がします。トータルテンボス好きなら、多分このマンガ好きです。私事ですが、芸人で一番好き。

 散々ミナレは嫌味がない、と書きましたが、大村は嫌味ありますね、しかも結構。



むずびに

 ラジオドラマ化はもうとっくにしてるので、次は実写を期待。



 ちょっとここからは自分のラジオの思い出話します。興味なかったら飛ばしてください。

 僕自身、ラジオが好きで、NHK-FM「ミュージック・スクエア」後期(?)パーソナリティの、宮原亜矢さんの声や話し方がとても好きでした。

 当時、BUMPの「カルマ」が毎週トップ10にランクインしていた。たしか13週連続でトップ10入。


 
 聴いてる内に、自分も応援しようとリクエスト。その次の週でトップ10から落ちました。応援した矢先ですよ。悲しかったけど、いい思い出。23時、布団の中で「なんでだよ」とむせびないた(嘘)のは記憶に新しい。

 今も音楽好きな若者であれば聞いてるであろう「SOL(スクールオブロック)」。

 急に流れるいい声のおっさんの「ジェッッットストリィぃム」それが眠気眼に響く深夜。

 そして我らが(?)「やまだひさしのラジアンリミテッド」。DX(デジタルクロス)、週間になったF(フライデー)」だったり。あのハイテンションおじさんはいつまでも忘れない。とういか、やまだひさしの動向は今でも追ってます。

 時代は変わって、今はポッドキャストでトータルテンボスの「ぬきさしならナイト」
爆笑問題の「カウボーイ(今はリトルカウボーイしか配信されてないのがもどかしい)」
マイケル&マミの「バイリンガールニュース」
などをよく聞いてる。

 夏休みの時期の実家では、よく「夏休み子供相談室」が垂れ流しにされていた。素朴な疑問が面白かった。こどものときも、おとなのときも、素朴な疑問はいつ聞いても面白い。

 ながながと馴染みある番組を挙げたけど、ぱっとこれくらい思いつくくらいにはラジオというコンテンツが好きなんです。

 本当のラジオ好きからすれば、数ミリしかラジオを味わえてないかもしれないけど、それでもこれらの番組は自分を形容する大事なものです。

 今、新たなネットラジオとして名を馳せ、流行ってる「voicy」とはまたひと味違った、「番組」としての面白さがあります。

 ラジオ業界が、ちょっとでも盛り上がると嬉しいな、と思う次第でした。作品「波よ聞いてくれ」が電波にのってバズってくれたらちょっとは盛り上がるでしょう。

 「波よ聞いてくれ」読んでくれ。そんで、たまには、ラジオ聞いてくれ。

 ではまた。

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