「あの星って大人しか落とさないの?」

「それがな、こどもも気づかんうちに落としとるのじゃよ。」

「さわれないの?」

「本人にしか触れぬ。」
 



 その国には星が落ちていた。その星は見ることはできるが、拾うことができない。さわることは出来るが、輝きに干渉することはできない。キラキラしたり、矮小な輝きであったり、この星の存在自体が、少年”ノア”にとっては疑問だった。

 ある日、ノアは、国王に話を聞きに行った。

「王様王様、ここにはたくさん星が落ちてるけど、あれはなんなの?」

 王様は、気兼ねなく口を開く。

「あれはな、まだわしにもわからんのじゃ。星が落ちだしてから、まだ20年も経っとらんのじゃよ。まだ研究中なのじゃよ。」
 
 ノアは、齢10歳ながら勤勉で聡明だった。わからない、と言われただけでは引き下がられるほど子供じゃなかった。

「じゃぁさ、あれなんで拾えないの?すぐ近くに見えてるのに、触ることも出来ないの?」

 存在そのものが不思議な”落ちた星”に、持ちうる疑問の一つ一つを少年は解消していこうとした。わかるところから問題は解こうと、そう問う。王様は答えた。

「あれはな、どうやら落とした本人にか拾えないのじゃよ。見つけたわしらには、触ることもできん。もちろん拾うこともできんのじゃ。」

 そんな馬鹿な、とノアは思ったが、聡明な彼だ。実はもう拾うことは試していた。たしかに拾えなかったのだ。自分だけが拾えないのでは、と疑問に思っていて、王様に確認していた。ノアは、間髪いれずにまた質問をする。

◇◇◇

「落とした本人って何?だれ?あれって、おとしものなの?」

小さいことをいいことに、質問をどんどん重ねる。王様は嫌な顔ひとつせず、答える。

「あれは落とし物なのじゃよ。星の落としもの。誰にも拾えない落とし物なのじゃ。ここ最近わかったのじゃが、あれは人が落とすものなのじゃ。」

王様は続ける。

「実は街を凱旋してるときに、星が落ちる瞬間に出くわしたことがあっての。それを伝えたのじゃよ。」

➖ー▫▫▫➖ー

「おぬし、それ、落としたぞ。」

「え、いえ、これは私のではありません。」

「なぬ、それはうぬの落とし物ではないのか?」

➖ー▫▫▫➖ー

 王様は、小さな光が落ちるのを見つけて、親切心から伝えたのだが、民衆は自分のものでないと答えた。

「落とした本人すら分からないのじゃよ。だれのおとしものかすら分からないが、この国には、たしかに星は溢れてる。」

◇◇◇

 まだ疑問が残る顔をしたノアに対し、次は王様から質問を投げかけた。

「少年よ、星がどうして光るか知ってるかね?」

 まだ小さいから馬鹿にされてる、と思った少年は少し強い声色で答えた。

「もちろん知ってるよ。ボクは科学博士だからね。ボクらが見てる光ってる星は、水素ガスが爆発して、それが核融合を起こして燃えるんだよ。それが光って見えてね、それにも種類あって、自発的には光るのは恒星で、惑星とか衛星はね」

「よいよい、もう十分じゃよ。よく知っておるの。」

 ムキになり、まくしたてる少年をなだめるように、優しく王様は話を遮った。少しムッとした表情を見せたが、博識が伝わったのが嬉しいのか、ノアはそこまで不快にならなかった。

王様は、もう一つ質問をした。

「では、いつ光って見えるか知ってるかの?」

「大体7年後でしょ?」

少年は、よしきた、とにやつきを見せながらやや食い気味に答えた。

「正解じゃ。じゃがな、少年よ。この国に落ちた星の不思議なところは、すぐ光って、わしらに見えるのじゃ。」

 従来の星が光って見えるのは、何年も後なのはノアは理解していたが、すぐ光ることはとても新鮮に思えた。

「そうなんだ。あ、そっか。だから王様は誰かが落とした星にすぐ気づけたんだね。」

 少年は次々出てくる疑問を王様に投げかけた。

「拾うのはムリでもさ、削ることとかできるの?もっと輝くようにさ!」

 王様は哀しい顔になりながら答える。

「残念じゃが、削ることはできん。最初にも言うたが、あれは落とした本人しか触れんのじゃ。」

まだ疑問があるノアはさらに聞く。

「あれって大人の人しか落とさないの?」

 王様は、笑いながら言う。

「はは、よい感覚じゃ。たしかにあれは大人が落とすことが多いのじゃが、実はこどもも落としてるんじゃよ。」

「え、じゃあボクも?」

「そうじゃよ。気づかぬうちに星はたくさん落ちているのじゃ。それには大人も子供も関係ないのじゃよ。」

—……
—「…?」
……—「…!!」

 落ちた星に関する質疑応答はしばらく続いた。ノアは帰り際に、光る星を落としたが、本人はそれに気づかなかった。

◇◇◇

 光ってないもの、輝いてるもの、本人が管理できてるもの、できてないもの。いろんな星がその国には落ちてる。

 国王は、便宜的に、その星たちを「レビュー」と名付けた。

 少年はまた星を見つけては、王様に問う。

 「これは誰の落とし物?小さい光だけど。」

 王様は、小さな水を落とした。

ひょうきんがくれた灯火【創作小説】【SS】

2018.09.11
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