「MOOSIC LAB」の作品、「わたしの居場所(仮)」の先行試写上映が京都「出町座」で行われたので、見に行ってきました。

 アーティスト「大槻美奈」×映画監督「川北ゆめき」。

初手、謝罪

 川北ゆめきくんへ。まず謝罪させてほしい。ごめん。アミュレットのMVで「あんまり好きじゃない」などと言ってしまって申し訳なかった。  
 そもそもあのMVは「川北くんが監督したものじゃない」とはその時に聞いてたけど、それでもまだ変な色眼鏡があって、「脚本してないだけでもカメラ回したのは川北くんなんだから」と、今回の「わたしの居場所(仮)」も正直あまり期待していなかった。何が(仮)だ、ガールフレンド(仮)か、検索検索ぅ!とさえ思ってた。

 見事に裏切られた。舐め腐った事を言ってすみません。靴舐めたら許してくれますか? ペロペロ。けど彼にマウンティングされると厄介なので絶対に舐めません。そんな古来からの服従の儀なんてしてしまった暁には、散々こき使われそう。

 冗談はさておき、脚本と映像(カメラワークと絵)がとてもよかった。俳優の演技や、間延びしてるなど気になる点はあるものの、大筋が綺麗で展開がとても素敵な映画でした。

印象にのこった点たち

監督が自己投影されたテーマ

 この映画は、川北ゆめき監督の自己投影映画。(本人もそう発言している)
 言い換えるなら登場人物が全て川北ゆめきさんなのである。川北ゆめき、多重影分身の術。そう思えるくらい、彼の言いたいことが詰まった映画になっていた。

川北ゆめき監督がたくさんいる.. (主演ふたりとも女性なのに)

 

 といった具合に。どのキャラクターにも川北くんの思念が配られてます。

 テーマ自体は「青春の葛藤」で非常にポップ。空を眺めながら星を人に例えるのも、失礼かもしれないが、これもよくある例で分かりやすいものだった。

「なんのために映画をとるんだろう」
「映画を撮るために生まれてきたんだ」
「なんのために役者をしてるんだろう」
「お金にもならないのに 現実をみようよ」

 学生時代のモラトリアム・葛藤。なにか趣味がある人なら一度は抱えたことがある悩み。「したいことの延長に何があるのか」の悩みが大きなテーマ。そして、自分てなんだろうと「居場所」の意義もひとつ。

 誰もが持つであろう、二面性の葛藤を、登場人物に投影し描く。監督ひとりの中でぶつかりあってる”たくさん”を登場人物に分配して、青春群像を描いてる。一人ひとりが、ある意味自分をもってる個性的な登場人物なのだけど、その親元の成分は完全に川北ゆめき監督。ゆめきエナジー・エキス。けれど、俳優がしっかり俳優してて、いい意味でそれを感じさせない。作者の顔が見えるのに絶妙に見えないバランスがあった。ツナワタリ。

大槻美奈の曲の魅せ方のキレ

『宇宙』を路上で作曲してるシーンで、大槻美奈と出会う主人公。このシーンの導入も良いのだけど、その他の曲の入りの気合が半端じゃない。音楽ありきでつくったと言ってるだけあって、ある意味78分に及ぶ壮大な大槻美奈のMV。そう言えるほど音楽の導入が綺麗で、編集もノッリノリだった。

補足
※音楽ありきで作ったと書きましたが、そもそも「MOOSIC LAB」の企画自体の趣旨はそこにあります。それを踏まえた上で、音楽(楽曲の理解)によく焦点が当たって、ノリノリだったと感じたわけです。

 川北監督の映像の魅せ方と、大槻美奈の楽曲が相乗効果を産んでいて、それはそれは愛を感じた。川北作品であり、大槻作品。持ちつ持たれつ、二人のお互いのPVなような。どちらの魅力もしっかり出ている。良いコンビ。

 「大学のサークルで浮いてる」とやけにリアルな設定から、ライブハウスでの活躍。その演奏シーンの生音から音源への繋ぎ方や、曲を再生しながら裏で見せる演劇など使い方が、「現実と理想」を映してるようでハラハラした。

 何度も言うけど、大槻美奈の劇中歌が流れるときの映像はキッレキレ。楽しいのを肌で感じて、楽曲の良さと演出に鳥肌がたった。そして身に改まったのは『アミュレット』の曲としての完成度の高さ。その硬度の高さ。もはやダイヤモンド。

俳優の演技と大槻美奈のギャップ

 気になる点として、俳優の演技があった。概ね良いとは思ったのだけど、たまに棒読み気味で会話が進むのがどうにも気になった。(たまにです)
 
 大槻美奈に関しては完全にいつも通りすぎて、ライブのMCの延長でそれがそのまま映像に載ってた。そもそも彼女は音楽家であって、俳優でないのでこれはどうしようもない。普段喋ってる人が、そのままなぜかスクリーンの中にいる感覚でなんだか不思議なもの。そこにそのままいるようで、映像。

野島さんの演技の上手さ

 この映画、登場人物のほとんどが女性。メインキャストの中で二人だけ男性がいて、その一人が野島さん。彼の演技がめちゃくちゃ自然で、メインの3人組の縁の下の力持ちだったなと思うわけです。

 野島さんともうひとりいる男子勢、ふたりともめっちゃいい味出してました。うまい出汁でした。野島さんでないもうひとりの色男も、パーマめちゃくちゃかっこいいし自然だしダンディだしなんですかもう。

間延び

 もう一つ、少しだけテンポロスな部分が多い気もした。「じっくりと感情を見れる」と言うと聞こえが良いのだけど、たまに長過ぎたり。自分自身はギリギリ耐えられる長さかなーと考えたのですが、冷静に見ると長いとも思うことも。

 これに関して、監督は「意味をもたせている」とのことだけど、もう少しカット(もしきはセリフのテンポとリズムアップ)しても良いのかもしれない。監督と親しい方も、「一般視聴者のことも考えろ」と言っていた。「シアターに来る人はたいてい物好きだから大丈夫だけどな」との事。間違いない。

 テロップなんですが、テロップ自体の存在は別に悪いとは思わなくて、「ひとつひとつの文字が多いかな?」とは思った。何行もあるわけじゃないので、読むことは難しくないのだけど、伝えたいことが若干分散してる気がする。さっぱり一言ドンと出すと印象に残るような気もした。

それでも脚本の良さが光る


 
 気になる点をつらつらと述べたりしたけど、それでも脚本の綺麗さは間違いない。映画にある一本の筋はとても強いもので、感情が強く滲みながら、素晴らしいものでした。

 時系列がいい具合にほんの少しずつずれていて、それをガッとまとめる最後。「音楽と連動したフラッシュバックの連続のシーン」や、「あの笑顔のシーン」をしっかりともってくるのは最高にゾクゾクした。

 「あー、やっぱりきたぁ!」と予定調和なようで、微妙にタイミングをずらしてくるのがとても憎い演出で、ハチャメチャに気持ちがよかった。竹内ももこさんほんとかわいい。



むすびに

 気になった点はいくたかあれど、最初にいった通り脚本が良いので、楽しめる作品でした。映像も綺麗。夜の描写が特に美しく、あれはライティングが優秀なのでしょうか。夜の絵が映えていました。画角も全体的にすごく好みだった。楽曲『宇宙』が根底にあっただけあり、納得の締め。

どんな人にみてほしいか?

 ぼんやりやりたいことがある人に一番刺さるような気がした。

 やりたいことがあって葛藤してる人や、やりたいことがなくてぼんやりしてる人がみると感じるモノが多いのでは、と思います。自分の信条でもあり、食傷気味に言われてる事ですが、「好き」が全てのエネルギーの根源です。なにをするにしても、「好き」じゃないとダメだなと改めて感じました。「けどやりたいことだけで生きていけないしなー」の内向な戦争を描いてる作品。

 さらに広く言うと、「好きなものがあって、これからどうやって生きようか考えてる人」には共感するポイントがたくさんある映画。

タイトル、映像はまだまだ変わる

 ほとんど完成らしいですが、まだ細かい微調整はするとのこと。完成形が楽しみ。

 「わたしの居場所(仮)」なのはタイトルをまだ迷ってるそうです。検索検索ぅ!とかふざけてすみません。天体もひとつの要素だったので、「星との距離の掴み方」「青春の輝き」とか「星追う人」とか「夜光虫とライブハウス」とかどうでしょうか。寒いですかそうですか。ちくしょう。

 タイトルって難しいですね、作品の命ですもんね。(仮)として、映画のタイトル案募集してたけど、やっぱりここは他力本願じゃダメな気もする。

 今回のは先行”試写”。まだ編集され、多方面の声を聞いて、さらに作品が研鑽されるはず。楽しみ。モラトリアムは気持ち次第。モラトリアムは終わらないのです。

11月頃に東京で上映(完成形?)するらしいので、興味ある方は是非。川北監督自身がとても楽しい人なので、それも一つのお楽しみ。

ではまた。

”音の鳴る絵画” ポップでアーティスティックな音楽家【大槻美奈】

2018.02.11

監督:川北ゆめき氏のTwitter。

hitoto

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