「マンガなのに音が聴こえる」

 おかしな話なんですが、本当にそれくらい表現に富んだマンガがあります。

 文字・セリフ・オノマトペ・絵。それらが噛み合うと映像より音がよく聴こえることがある。聴こえないものが聴こえたり、見えないはずのものが見えたり。脳は面白いようにできてます。

 音楽を少しでも好きな方であれば、きっと人それぞれ色んな音が、マンガから再生されると思います。

 そんな「音が聴こえるマンガ」達を紹介。

音がないのに音が聴こえるマンガ

四月は君の嘘

ざっくりあらすじ

 母の死をきっかけに、ピアノを弾けなくなった天才ピアニスト:有馬公生(ありまこうせい)が、型破りなヴァイオリニスト:宮園かをりと出会い、ふたたび音楽とむきあう。ピアノをやめ、モノクロに見えていた世界は、再びカラフルに色づいていく。

作画・原作:新川直司


 コンクールのために機械のように正確に弾く有馬公生と、コンクールなんてクソくらえな宮園かをり。その二人のコントラスト。

 「無個性(モノクロ)と個性(カラフル)がぶつかりあうとどうなるのか?」そんなワクワクがあります。


 爽やかな青春音楽漫画。セリフのリフレインが特徴的。見開きページで繰り返す迫力あるリフレイン。そして全編にわたって、度々繰り返されるセリフは、同じ言葉でも発するタイミングで様々な色を見せる。

(『ちはやふる』のリフレインにも通ずるシーンが多くあります)

 
 アニメ化も実写化もされた作品だけど、不思議なことにマンガが一番音が聴こえた。表現力という意味で、マンガのほうが演奏は活き活きしてた印象があります。

 演奏シーンの影の使い方や、表情のアップはアニメにはない臨場感があって、聴こえるはずがないのに音楽を聴いてる気分になれる。

『四月は君の嘘』の特異なタイトルの意味は最後しっかりと明かされ、涙なしには読めなかった。ぐわんぐわん泣いた。

全11巻完結

BLUE GIANT

ざっくりあらすじ
 主人公:宮本大は、中学生の時、友達にジャズ喫茶に連れて行かれ、そこで初めてジャズの生演奏を見る。衝撃を受けた宮本大はそれから「ジャズ奏者」になると決心し、ひたすら河原でサックスの練習をする。

作画・原作:石塚真一

 主人公:宮本大がとにかくマッスグ。ちょっと悪い言葉で言うなら「愚直」だけど、「ジャズプレイヤーになる!」この意思を本当に強くもっている。

 なにも保証されてないのに突き進む姿は愚直。ジャズプレイヤーになるまでの戦略もないもない。だけどその愚直さが宮本大をたらしめるもの。

 下手でも情熱のある大の音に、段々と巻き込まれていく。まわりもその熱意と練習量を認めざるをえなくなる。

 宮本大は、河原でひとりでずっとひとりで練習したため、初セッションシーンで「音がでかすぎる」と怒られたりするのがもどかしくも面白い。

 一見とっつきにくい「ジャズ音楽」がテーマになってるけど、余白がキレイにとられていて、とにかく読みやすい。
 演奏シーンはほとんど言葉なしで、ひたすら線・線・効果線。そのしつこいくらいの線の多さが、音を聴かせてくる。

 毎巻最後の、大とのエピソードトークが哀愁あって素晴らしい。

 楽器を演奏する人はもちろん、なにかを諦めてしまったひとや、やる気を出したいひとに読んでほしいマンガ。

全10巻(”無印”は完結済み)

 続編はこちら。

この音とまれ!

ざっくりあらすじ

 箏曲部:倉田武蔵(くらたたけぞう)は先輩達の卒業で、部員がひとりになった。不良達に部室を占領され、廃部の危機になっていたが、そこに札付きの不良「久遠愛(くどお ちか)が「ある理由」に入部。腹黒天才少女「鳳月さとわ」も不純な理由で入部。相容れないであろう人たちが箏を通し団結し、全国を目指す。

作画・原作:アミュー

 爽快、なおかつ熱い。

 今後「来る」と思っているマンガ。絵がかなり爽やかで、青春箏曲部ストーリー。青春群像劇。

マイナー楽器である「箏(こと)」その部活「箏曲部」。

 箏と聞くと、「おとなしい楽器」のイメージが先行しがちだが、実はかなり激しい楽器。楽譜の読み方も独特で、運指も面白い。

キャラクターの人間関係がやけにリアル

 キャラクターの心理描写、人間関係の描き方がやけにリアルで、気がついたらどのキャラも好きになってる。腹黒さとわちゃんも腹白あきらさんもかわいい。愛もくるすもさねやすもかわいい。


『この音とまれ!3巻』

 さとわちゃんの過去と現在は重い。



 作者:アミューさんは少女漫画出身だけあってか、絵が繊細。繊細でありながら、ジャンプSQに連載されてるのは伊達ではなく、とても熱い。しっかり少年漫画。

ちなみに、アミューさん自身も箏の奏者であり、さらに姉がプロの箏奏者。

 少年マンガに少女マンガの甘酸っぱさが混ざっていて、個人的に『ちはやふる』のような読み心地があって、次に実写化するのは『この音とまれ!』かなと思う次第です。

既刊18巻 (※2018年8月現在)
以下続刊

SOUL CATHER(s)

ざっくりあらすじ

 主人公:神峰翔太(かみねしょうた)は人の心がみえ、本音も嘘も全てわかってしまう。見えてしまう”から”人間関係に苦しみ、孤独にすごす。

 ある日、人の心を掴むような演奏を聴き、そのサックス奏者に心が見える”からこそ” 「一緒に吹奏楽部をやろう」と誘われる。

作画・原作:神海英雄

「心の形が状態が見える(物理的)」という特殊能力を持った主人公が吹奏楽部の指揮をするマンガ。


物語序盤で、ライバル(伊調)と出会い、共感覚(シナスタジア)として説明してますが、神峰のもつものは共感覚の域を超えてもはや超能力。
 音を聞くと色が見える、味がするだとかそんなものをはるか超越してます。鋭敏にも程がある。

 見えるからこそ苦悩する神峰。

比喩表現、マンガ的表現の秀逸さ

 比喩表現が秀逸さ、台詞回しのユニークさが最高。連載時からずっと家宝にしてる作品。絵柄や勢いに特徴があるので若干ひとを選ぶけど、あらゆる意味で「ユニーク」な作品。アイディア、話作り、絵の表現方法、どれもが個性豊か。

 音楽の演奏シーン、神峰翔太の覚醒シーン、秀でた点をあげればキリがないほど表現力の塊。師匠はジョジョの荒木飛呂彦さんとのこと。納得。

もはやカウンセリングマンガ

 こちら音楽の被った「カウンセリングマンガ」といっては過言でない。それくらい人の心に深く触れて、改善していく。心理状態の表現が本当に鮮やか。解決の仕方や、考え方がとても面白い。


 新キャラが登場するたび、「このひとの心はどう表現されるんだろう?」とワクワクがとまらないこと必至の名作。

完結11巻 

余談だが、神海英雄の前作「Light Wing」はある意味で名作。「2秒で切り返す」は一時期マイブームだった。

 前作は打ち切り。全3巻。伝説の作品。完成度は『SOUL CATHER(s)』に比べると格段に下がるが、個性はやはり隠しきれてない。

 神海節はここから始まった。



むすびに


「姉貴みたいに苦悩して辛そうなのに続けてる意味が俺にはわかんねぇよ」
「悪かったわね でもやめられない」 「なんで?」 「それはね 出会ってしまったから 関わらずにはいられない」


 絵の表現力で、音が聴こえてくるようなマンガたち。改めて読んでいて涙腺をやられました。ひたむきな青春ものにどうも弱いみたいです。

 今回紹介したのは「音楽マンガとして」だけでなく、単純に「マンガとして面白い作品」たちです。

 読んでみて、聴こえないはずの音が聞こえて、作品に没頭し、物語をより楽しめると幸い。

 それでは。

hitoto

Twitterで記事更新・マンガ・音楽の事など呟いてます
始めたばかりなのでお気軽にフォローどうぞ マンガの話など一緒にできたら嬉しいです
@zakkibaran